日本武道学会空手道専門分科会・空手道研究会が3月3日(日)、「スポーツにおける多様な性と空手道の可能性」をテーマに、第23回ワークショップを対面(日本空手道会館)とWEB会議のハイブリッド形式で開催。3名の講師により、学校現場での指導で直面した課題や対応について、スポーツ社会学や幅広い競技での組織的対応について、講義と総合討論が行われました。
空手道専門分科会の鈴木浩司会長(日本大学)は、「ジェンダーの話題はデリケートであり、かつ避けて通れないテーマでもあります。本日のワークショップで、現場の体験や新しい知識を学ぶことによって、みなさんの認識をアップデートしていただきたい」と挨拶しました。
ワークショップでは、山田ゆかり先生(全日本空手道連盟理事・学校法人村上学園)が「高等学校と女子空手道部における性的少数者に対する意識や配慮の変化」と題し、女子校から共学校になった現在までを振り返りました。
女子校時代にトランスジェンダーと思われる生徒がいたものの差別や揶揄されることはなかったこと、共学になった教頭時代の2018年、トランスジェンダーの中学生が入学を希望、このとき医師の診断書の提出を求めたことは時代遅れの対応だったと思っていると述べました。約40年にわたる女子空手道部での指導で、交際していると思われる部員同士への対応は寮や合宿で同じ部屋にしないことのみだったが特に問題はなかった等、具体例を交えた報告がありました。
高尾将幸先生(東海大学体育学部准教授)は「スポーツ社会学の視点から」と題し、ジェンダーの平等について発表を行いました。
「19世紀には、女性はスポーツに向かないとされていましたが、多くの人々の働きかけや先駆的な女性アスリートによって、現代では女性アスリートが活躍する場ができました。しかしメディアによる報道では“競技を離れれば、ふつうの女の子”というような、ふつうの女の子はスポーツをしない、ふつうの女の子に戻ることに価値があるという前提の表現が多い傾向があります」と解説しました。
松宮智生先生(清和大学法学部准教授)は、「スポーツにおける多様な性をめぐるルールと組織的対応」と題した発表を行いました。
各競技団体ではトランス女性、トランス男性をはじめとした多様な性に関わる参加者の資格(ルール)の策定、見直しを行っています。
松宮先生は「当事者の負担を減らすために、指導者は知識を持っていただきたい。自分たちの競技の本質は何か、何を競い合っているのかを考えれば、トランス女性、トランス男性の参加のありようもみえてくる」と述べました。
空手道専門分科会の三村由紀副会長兼理事会代表(全日本空手道連盟理事・防衛大)は「まだまだこれからの話題かと思います。全日本空手道連盟や世界空手連盟と協力し合いながら、よりより競技、よりより空手界にするためのスタートが、このワークショップなのではないかと思っております」と挨拶しました。
JKFan5月号(3月23日発売)に掲載いたします。